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サッカー「欧州スーパーリーグ」構想事実上頓挫 「伝統軽視」想定外だった批判

 【ロンドン=板東和正】欧州サッカーの強豪クラブが創設で合意した新大会「欧州スーパーリーグ(ESL)」構想が、発表からわずか数日で事実上頓挫した。米国式の運営を採用し、一部クラブに利益が集中する構想だったことが「欧州サッカーの伝統を軽視している」と猛批判された。英政界までも巻き込む大騒動となり、参加クラブの大半が撤退に追い込まれた。

 欧州サッカーの強豪12クラブは18日、20チームで争うESLを創設することで合意したと発表した。国内リーグに出場しながら10クラブが2組に分かれて対戦する構想で、2022年の開幕を目指す方針だった。

 ESLは、欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する世界最高峰の欧州チャンピオンズリーグ(CL)に代わる新大会になると想定されていた。(【「判断誤った」】JPモルガン、欧州新リーグに巨額出資)

 ESL構想が生まれる契機になったのは、新型コロナウイルス禍により、クラブの業績が悪化していることだ。国内リーグの多くの試合が無観客で行われた打撃は大きく、昨年には、収入減から破産を申請したクラブもあった。

 そうした中、CLの放映権収入の分配をめぐって「取り分が少ない」と不満を抱いた一部の強豪クラブが、ESL創設という形で「独立」を企てた。

 ESLの放映権とスポンサー収入はCLの約2倍に当たる年間総額40億ユーロ(約5200億円)に上ると試算されていた。12クラブは共同声明で、新型コロナ流行により「既存の欧州サッカーの経済モデルの不安定さが加速した」とESLの意義を強調した。

 しかし、この構想にはまたたく間に批判が殺到した。英調査会社ユーガブによると、英国サッカーファンの実に約8割が反対したという。反響は政界にもおよび、ジョンソン英首相は構想阻止のために「できる限りの対策を検討する」と強調した。英メディアによると、政府内ではESL参加クラブを対象に、外国籍選手へのビザ(査証)発給を拒否することなどが協議された。

 強い反発が出た背景には、下部への降格がない米プロスポーツ型のアイデアをESLが取り入れたことがある。ESLは創設クラブが毎年参加できる仕組みで、ピラミッド式のリーグ戦を中心とする欧州サッカーの伝統とは異なる。一部のクラブだけが安定的な収入を得ることへの批判も強かった。

 米CNNテレビは、ESLについて「経済力の弱いクラブでも勝てば昇格でき、財力があっても負ければ降格を免れないという欧州サッカーの伝統と相いれない」と分析。ダウデン英デジタル・文化相は欧州サッカーを「国家遺産の一部」とし、伝統を守る姿勢を強調した。

 批判を受け、12クラブのうち大半のクラブが撤退を表明した。ただ、コロナ禍が依然続く中で、各クラブの経営難という根本問題は改善されないままだ。欧州サッカーは米国のプロスポーツより収入が少なく、UEFAの運営に対する批判も少なくない。

 今回の騒動には欧州サッカーが直面する課題を浮き彫りにした面もあり、米国流の運営方式を求める動きが再び出てくる可能性も指摘されている。

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