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「娘の死無駄にしない」組織罰実現へ今なお精力、JR脱線事故で長女亡くした遺族

 乗客106人が犠牲となった平成17年4月のJR福知山線脱線事故から25日で16年となるのを前に、事故の遺族らが企業の刑事責任を問う「組織(法人)罰」の創設を目指して、その必要性を訴える書籍をまとめた。安全対策が後手になっても、なぜ罪に問われないのか-。事故以来抱えてきた疑問の立法解決に向け、遺族は闘いを続けている。(藤木祥平)

 書籍は、重大事故の遺族らと有識者で構成する「組織罰を実現する会」がまとめた。代表を務める大森重美さん(72)=神戸市北区=は脱線事故で長女の早織さん=当時(23)=を失った。「娘の死を無駄にしない」と28年4月に会を立ち上げ、シンポジウムの開催や署名活動を通じ、組織罰創設のための機運醸成に努めてきた。

 現行刑法では、重大事故において過失責任は個人にしか問うことができない。会が目指すのは、業務上過失致死罪に個人だけでなく法人も処罰対象とする両罰規定を設け、罰金などを科すことができるようにすることだ。

 大森さんは16年前の事故当日、早織さんが事故に巻き込まれたという一報を妻の電話で知った。線路脇のマンションに突っ込み、大破した1両目から早織さんが見つかったのは、事故から4日後だった。

 「初めは娘の死を受け入れられず、ぼうっとその場に立っていたのを覚えている。涙も出なかった」

 時間がたつにつれ、明らかになったのはJR西日本の組織的な問題点だった。自動列車停止装置(ATS)の整備の遅れ、利益優先の過密ダイヤ、運転士に大きなプレッシャーをかける懲罰的な日勤教育…。自身も建設業界で働き、安全管理に携わってきた大森さんは「事故は多くの要因が絡み合い発生した典型的な組織事故だ」と確信した。

 その後、JR西の歴代4社長は業務上過失致死傷罪に問われたが、いずれも無罪に。JR西という組織も裁くことはできず、大森さんは「司法の限界」を感じたという。

 「組織罰はなぜ必要か」と題した書籍では、大森さんをはじめ、笹子トンネル天井板崩落事故などの遺族や弁護士、大学教授ら計11人が多角的に組織罰の必要性を主張している。

 《安全対策が後手になっても罪を問われない。先手を打って対応する必要もなく、“組織の幹部は事故が起きるのを待っていれば良い”とさえ思えるような消極的な待ちの姿勢を許容している》。大森さんは書籍にこうつづっている。

 毎朝仏壇に手を合わせ、早織さんを悼む。「帰ってきてくれたらいいんだけど、そうはならない。せめて死が無駄にならないよう、この活動を続けたい」と話した。

 書籍はA5判88ページ、現代人文社刊。1320円。25日に発売予定で、全国の大手書店などで購入可能。

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