終活の経済学

「おひとり様」時代の到来(6)血縁を超えて死後事務を託す

 おひとり様が最期を迎えたとき、山のようにある死後の事務を、どうしたらいいのだろう。

 はっきりと言えることは、周囲の何かしらとの関係性をつくらないと、死後事務ははかどらないということだ。それが人であるか、企業や団体であるかは、どうでもいい。最期の最期まで、おひとり様人生を貫くのであれば、生前からどこかとの関係を築く必要がある。

 “疑似家族”のような関係性とでもいおうか。「周囲と完全に縁を切ったおひとり様」というのはあり得ないのだと、しっかりと肝に銘じておこう。

 具体的に、だれに託したらいいのだろう。考えられる方法はいくつかある。

 (1)生前に付き合いがなかったとしても親族に頼む

 (2)親しかった友人や知人に頼む

 (3)信託銀行など金融機関のサービスを利用する

 (4)弁護士、税理士など士業に頼む

 (5)自分の住む自治体などに窓口があれば頼む

 それぞれメリット、デメリットがあるので、自分に合った疑似家族を探す必要がある。

 NPOと「契約家族」に

 具体的な例として、30年近い歴史を持つ「NPOりすシステム」の活動をみてみよう。りすシステムは、利用者と「契約」を結ぶことで、晩年の生活サポートや死後事務を請け負う。

 本部を含め全国に11拠点を構え、契約者は、すでに亡くなった人を含め約6600人。現在存命の人は4000人を超える。平均年齢は76.8歳で、おひとり様は7割にも達する。家族や親戚がいるものの、「迷惑をかけたくない」と契約するケースも多いという。

 代表理事の杉山歩さんは「葬儀社やお墓の生前予約をしたり、遺言書を書いておいたり、みなさん自分なりに準備はしている。でもそれらは『点』であって、一つひとつがバラバラ。死後事務というのは『線』でつながっているから、本人が準備したことをきちんと実行する人や機関が必要。りすシステムは、『契約家族』となって死後事務をしている」と語る。

 具体的には、結ばれた契約に基づいて入居保証や入院保証、付き添いといった「生前事務」や、火葬・納骨、部屋の片づけなどの「死後事務」を行う。

 契約者が認知症になって判断力が落ちてしまったときには、任意後見人としてサポートをする。サポートのための費用は、事前に預託金(70万円~)を預かり、そこから捻出する仕組みだ。承継者がいなくても入れる墓の先駆けとして、1989年にできた合葬墓「もやい」の運営団体がルーツとなっているため、墓の心配もいらない。

 「墓友」と助け合い

 「墓」をきっかけに生まれる新たなつながりもある。「墓友(はかとも)」という言葉の生みの親である「NPO法人エンディングセンター」は、桜の木を墓標とした跡継ぎを必要としない墓「桜葬」を東京と大阪で企画し、会員運営している。

 個別区画が隣接するいわばマンションのような集合墓で、年に一度、桜の咲く季節に合同祭祀(さいし)(桜葬メモリアル)を開いて追悼する。将来的にそこに眠る人も、眠る人をしのんで訪れる人も、「血縁」を超えた「結縁(けつえん)」でつながるというのが理念だ。

 理事長の井上治代さんは「まったく別の人生を歩んできた人たちが、晩年に同じ『桜葬墓地』を契約したことによって出会い、墓を核として信頼関係を築き、『おたがいさま』と晩年を助け合える緩やかな仲間意識が育まれている」と話す。

 エンディングセンターには「もう一つの我が家」と呼ばれる一軒家がある。そこでは団体が主宰する集まりのほか、会員同士で自主運営する書道や読書、合唱などさまざまなサークル活動が行われ、会員同士それぞれが得意分野を生かしながら楽しんでいる。参加者はおひとり様が多い。

 そこでは、会員同士が「おたがいさま」の精神で助け合い、センターも入院保証や任意後見などの生前サポートから葬儀、死後事務、部屋の片づけなど死後のサポートも行っている。

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