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「あと一歩も二歩も前へ」 仏国家最高勲章の建築家、安藤忠雄さん

 建築界に長年貢献し、日仏友好に尽くしたとして、世界的建築家、安藤忠雄さん(79)にフランスの国家最高勲章「レジオン・ドヌール勲章」のコマンドゥールが授与された。23日に仏大使公邸(東京都港区)で開かれた叙勲式では、「フランスという文化国家に憧れていた人間として、素晴らしい一日となった」と喜びを表現、自身と同国との関わりについて改めて振り返った。

 最初の出会いは、独学で建築を学んでいた若い頃、大阪・道頓堀の古本屋で見つけた一冊の本-20世紀近代建築の巨匠、ル・コルビュジエの作品集だ。「何回も図面を書き写すうち、わからないなりにわかったような気持ちになって、ル・コルビュジエが働く事務所を見たいと思ったのです」

 1965(昭和40)年、シベリア鉄道経由でフランス入りするも、その直前に巨匠は他界し、会うことはかなわなかった。が、作品の数々や事務所を巡るうち、故郷のスイスからパリに出てきたル・コルビュジエが、新しい建築を掲げ、世に認められるまでの長い道程を思ったという。

 「彼が最後まで戦い続けた姿に、私は感銘を受けました。ものを考えたり作ったり、生きることとは挑戦だと。その後、マルセイユ港からアフリカ・ケープタウン経由で、インドやアジアを見た。青い地球上でそれぞれが一生懸命生きているんだなと自分なりに勉強して帰ったわけです」

 安藤さんは後に、ユネスコ本部(パリ)で手掛けた「瞑想の空間」(95年)で、「地球はひとつ」というコンセプトを円筒形の建築空間を通して発信。床には「二度とあってはならない」と戒めを込め、広島の原爆投下で被爆した石を敷いた。

 そしてこのほど、パリ中心部に、18世紀にさかのぼる旧穀物取引所を再生した現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」を手掛けた安藤さん。新型コロナウイルスの影響で開館は延期されているが、円筒形の歴史的建造物の中に、円筒形のコンクリート建築を挿入。過去の記憶を未来につなげるとともに、地球平和の願いを再び表現した。さらにその思いは「こども本の森 中之島」(大阪、2020年)を皮切りに、未来を担う子供の心を育むプロジェクトへとつながっている。

 安藤さんは受章を機に、力強く宣言した。「これからもう一歩も二歩も前に行けといわれるならば、人生100年、思いを遂げるよう、やっていきたい」(黒沢綾子)

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