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ワクチン 医療従事者確保なお課題 高齢者接種、週明け本格化

 新型コロナウイルスワクチンの供給が週明けから本格化し、高齢者接種のペースアップが期待される。緊急事態宣言による感染抑止効果に限界が見える中、国はワクチンを「出口戦略」と位置づけ、大規模接種を主導するなど関与を強めている。菅義偉(よしひで)首相自ら「7月末の接種完了」の大号令をかけるが、現場の自治体では医療従事者確保などの課題が解消されておらず、反転攻勢は容易ではない。(伊藤真呂武)

 「長引く感染対策の決め手となるのがワクチン。私たちが安心した日常を取り戻せるか。それはいかに多くの方にワクチン接種ができるかにかかっている」。宣言延長などを決めた7日夜の会見で、菅首相はワクチンへの期待と接種ペース加速への意欲を示した。

 高齢者接種は4月12日に始まり、今月6日時点で約24万人が1回目の接種を終えたが、約3600万人の対象者全体では0・7%にすぎない。供給不足が最大の要因で、厚生労働省に報告した接種計画では、少なくとも3割の自治体が接種を始められていない。

 一方、10日以降は2週間に約760万~約930万人分のペースで配給され、6月末までに医療従事者と高齢者の合計を上回る約5千万人分が行き渡る見込み。こうした中で、菅首相が高齢者接種の「7月末の完了」を打ち出し、自治体は方針転換を迫られた。

 厚労省幹部は「4月上旬には、秋以降にならないと終わらないというところが結構あったが、それではダメという話」と指摘。現時点で1741市区町村のうち約6割から7月末に完了するとの回答を得ている。

 医療従事者の確保や予約システムなど、自治体側は複数の不安要素を抱える。首相案件の完遂のため、「どうしたら接種ペースを上げられるか。自治体ごとの課題の『御用聞き』をする」(総務省担当者)など省庁横断的に支援し、さらなる「前倒し」を促す。

 自治体任せだった接種業務にも国が動いた。今月24日から3カ月間、東京都と大阪府に防衛省が運営する大規模接種会場を設置。東京会場は首都圏1都3県の高齢者を対象に1日約1万人の接種を目指す。米モデルナ社製ワクチンの承認を近く判断する方向で調整するなど連動的に事も運ぶ。

 とはいえ、国の思惑通りに進むかは不透明だ。高齢者約3600万人に2回ずつ、約7200万回の接種を約3カ月間で終えるには、1日約80万回ペースが必要。菅首相は例年インフルエンザワクチンが1日約60万回接種されているのを根拠に「1日約100万回」の目標を示した。ただ、これまでは医療従事者、高齢者合わせて1日最大約25万回にとどまる。

 国は接種会場への看護師派遣や歯科医師による接種などの特例を相次いで容認。接種対価の増額などの支援策も打ち出し、人員確保に手段を惜しまないが、収まらない感染再拡大が暗い影を落とす。「単純計算でもすごい数を打っていかないと、7月末の完了はとても無理だよね」。医療関係者はこうつぶやいた。

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