ヘルスケア

大阪の医療、課題はどこに 「年齢問わず、重症化も死亡も」コロナ影響連鎖的 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が12日から延長された大阪府。医療提供体制は逼迫(ひっぱく)を極め、重症患者に軽症・中等症病床で対応したり、手術などの一般医療が延期されたりするなど、影響は連鎖的に広がる。家庭内感染を防ぐ宿泊療養の使用は伸び悩み、自宅療養中に死亡する人も相次ぐ。“総崩れ”ともいえる現状はどこに課題があるのか。

 重症病床、変異株猛威で若者急増

 直前に改修を終え、重症病床として稼働したばかりの集中治療室(ICU)。人工呼吸器を着け横たわる患者を、医療用ガウンとマスク姿の看護師らが慎重に運び込む。「入ってください」「急いでください」。動線確保のため、周囲でほかのスタッフも声を掛け合い、緊張が走った-。4月末の大阪市立大学医学部付属病院(大阪市阿倍野区)の様子だ。今月10日、取材に応じた柴田利彦副院長は「症状悪化が早い。ホテルや自宅療養中に急変して運ばれてくる患者など、これまでは見なかった」と変異株の猛威に危機感をあらわにする。

 高齢者が中心だった1~3波と比べ、4月以降は20~30代の搬送も目立つ。家庭内感染で本人と高齢の両親のいずれもが重症化したケースもあったといい、「年齢を問わず重症化も死亡もする」(柴田副院長)。柴田副院長によると、コロナ病床には常に18~20人が入院。治療には2週間から1カ月以上かかる。人工呼吸器による管理が外れても大半の患者が退院できる状態ではなく、経過観察しながら軽症・中等症病院への転院を待つ。しかし、転院先が見つからない例も出ている。

 他のコロナ対応病院にスタッフを派遣してきた同病院。人員面での限界は近い。柴田副院長は「これ以上受け入れたくても受け入れられない」と語る。

 府によると、確保する重症病床は、日々増減があるものの約360床。府内の病院全てのICU(500床程度)の約7割にも上り、「これ以上の追加確保は限界」(府の担当者)。

 だが、4月13日以降、入院中の重症者が病床数を上回る「極限的に厳しい状況」が続いており、府は同月下旬、同病院を含む5大学病院に対し、大型連休中にコロナ以外の手術を延期し、重症病床を確保するよう要請した。同病院のほか、大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)もICU全30床をコロナ用に切り替え、一時的に一般医療に対応できない事態になった。

 府のコロナ専門家会議のメンバーで、りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)の倭(やまと)正也・感染症センター長は「早期治療で重症化を防げば病床逼迫の緩和につながる。ただ、現状では早期治療を担う医師の数が足りておらず、(直接コロナ医療には携わらない)開業医の力も必要だ」と話す。

 軽症・中等症対応「退院しただけ入院」

 「退院した分だけ入院がある。現場は綱渡り状態だ」。軽症・中等症患者用に17床を運用する大阪暁明館(ぎょうめいかん)病院(大阪市此花区)の担当者が悲鳴を上げる。

 患者が重症化すれば大阪府に転院調整を求めてきたが、4月以降は転院先の空きが見つからないケースが常態化。必要に応じ、重症化した患者に人工呼吸器などによる治療を続けた。

 ただ重症患者は軽症・中等症患者に比べ、2倍以上の医師や看護師が必要になる。このため重症化した患者への対応に追われ、病床の空きがありながら、コロナ患者の入院の受け入れを一時停止したこともある。担当者は「目の前の命を助けたいが人員がいない」と振り返る。

 5月10日時点で患者を受け入れているのは12床。だが「新規コロナ患者が減らない現状を見ると、いつ埋まってもおかしくない」(担当者)。ここ1カ月で、発熱を訴える20~40代の外来患者が増えているのも気がかりだという。

 府内では重症者を確保済みの病床に収容しきれず、一部は軽症・中等症病床で治療せざるを得なくなっている。11日の軽症・中等症病床の使用率は79・8%だが、重症者は中等症患者よりも人手が必要であるため、数字以上に医療体制は逼迫しているといえる。

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