教育・子育て

記述式・英語民間試験…大学入試改革に「赤信号」 構想の大きな変更が不可避に

 令和7年1月以降の大学入学共通テストでの導入可否が議論されている記述式問題と英語民間検定試験について、いずれも実施に赤信号がともりつつある。大学入試改革の2本柱とされながら、昨年度の共通テストから導入予定だった当初の計画は事前に頓挫。文部科学省の有識者会議で1年超にわたる再検討の結果、公平性の確保といった観点から実現を「困難」などとする慎重意見が相次いだ。最終的に大学個別の取り組みを促す方向にかじを切るとみられ、構想の大きな変更が不可避な状況だ。

 「指摘された課題は容易に解決できるものでない」

 「指摘された課題が解決する見通しが立たない」

 4月に行われた大学入試の在り方を検討する有識者会議。2日は記述式、20日には民間試験と、それぞれ導入の是非が話し合われた中で、委員からは同じような意見が上がった。

 これまでに「指摘された課題」は多い。主には記述式はマークシート式と異なり、50万人超の受験生の答案を短期間に正確、公平に採点するのが困難ということ。民間試験は民間が実施することによる会場の都市部偏在や高額な受験料などで、受験生の居住地域や経済力によって格差が生じる恐れが指摘されていた。

 それぞれの会合では、記述式は各大学が行う個別試験での出題を促すこと、民間試験も各大学が利用の有無を判断するといった意見も出され、共通テストの枠組みでの導入に否定的な意見が大勢を占めた。

 萩生田光一文科相は、有識者会議の提言を踏まえ、今夏までに結論を出す考えを示しているが、いずれも導入は困難とみられる。

 大学入試改革をめぐっては、「暗記中心」「一発勝負」「1点刻みの選抜」からの脱却を目指し、平成25年ごろに議論が本格化。文科相の諮問機関、中央教育審議会(中教審)は26年の答申で、知識偏重の大学入試センター試験に代わり、「思考力・判断力・表現力」を重視する新テストの実施を盛り込んだ。

 後の共通テストとなる新テストには「確かな学力」を把握するため、記述式問題を導入することが決定。

 また、英語で「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問うため、英検などの民間試験を活用する枠組みを設定。受験年度の4~12月に2回まで受けることができ、その成績を大学側が合否判定などに活用する仕組みも整備された。

 しかし、導入が近づくに連れて公平性や格差に関する批判が高まり、文科省は令和元年11~12月に相次いで導入の見送りを決定。直後から大学や高校関係者、有識者らで構成する会議を設け、現在まで26回にわたる会合が開かれている。

 大学側の反応はどうか。文科省が昨年7~9月に行った国公私立大の学部ごとを対象とした調査によると、共通テストでの記述式出題に否定的な回答をした学部が8割を占め、民間試験の活用についても否定的な意見が7割近くに達した。一律ではなく個別の対応を望む声が多かった。

 共通テストに導入する当初の目的は、記述式は作問や採点の負担から私立大を中心に多くの大学で実施が難しいため、導入によって底上げを図り、学力の格差拡大を防ぐことだった。民間試験についても同様で、全体的な英語4技能の向上につながるとされた。

 ただ、それが難しいとなった以上、有識者会議では個別に導入する大学にはインセンティブ(動機付け)を与えるなど、国が背中を押すような制度設計も検討課題に上がっている。

 文科省幹部は「これまでの経緯を考えると、(共通テストへの導入は)否定意見が多いのにそのまま提言に盛り込むことは考えられない。大学個別の取り組みを強烈に推し進めるということになるだろう」としている。(福田涼太郎)

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