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復活させたうつのみや花火大会 「想い」受け継ぎ奮闘

 新型コロナウイルス禍により夏の風物詩の花火大会の中止が各地で相次ぐ中、宇都宮市のNPO法人(特定非営利活動法人)「うつのみや百年花火」(沢村彬男会長)は「うつのみや花火大会」の8月14日開催に踏み切る。平成15年に一度は休止した同大会は、19年に市民ボランティアの力で復活。今年で15回目を数える。NPO法人が主催し、実行委員会のメンバーから会場スタッフまで、すべてボランティアという全国でも異色の運営形式。関係者は「子供たちに笑顔を」という復活時の思いを受け継ぎ、奮闘している。

 再び「ひと花」を

 「想(おも)い」。うつのみや花火大会の開催を告げるポスターに描かれた今年のテーマだ。コロナ禍での開催について、支援者や実行委員会のNPO法人内でも賛否が飛び交う中、「今年も会場での開催ができなければ、運営のノウハウが受け継がれなくなって活動が停滞してしまう」として、コロナ対策に万全を期した上で準備を進めることにした。

 テーマに込められたのは一度は宇都宮から消えた花火大会の復活を目指し、30代の若手経営者ら約10人が実行委員会を結成したその当時の志だ。

 当時32歳だった有志の一人、炭田恵(よし)崇(たか)さん(47)は、5歳の息子が描いた花火の絵が線香花火だったことにがくぜんとした。物心がついてから、打ち上げ花火を見せたことがないことに思い当たった。「子供たちに空を見上げて花火を見る楽しさを伝えたい」との思いを強くした。

 こうして炭田さんら10人は「宇都宮の子供たちに夢と希望、感動を」をスローガンに実行委員会を立ち上げる。合言葉は「ひと花咲かせてやろうぜ」。有志一人一人が仲間を10人ずつ集めて組織を拡大した。

 人間形成の場

 実行委員会は大会を主催していた地元新聞社から花火大会に関する資料を譲り受け、地元自治体や消防、警察、国土交通省などへの申請手続きをはじめ、花火業者との交渉、会場の河川敷の整備などに奔走。活動が理解されるにつれ、地元企業を中心に資金支援も得られるようになった。

 こうして平成19年。宇都宮の夜空に4年ぶりに大輪の花が咲き誇った。

 同大会は翌年から、実行委員会の主力メンバーを毎年変えて継続されてきた。「子供たちに」の思いは受け継がれ、宇都宮市内の保育園、幼稚園などから3千数百枚の花火の絵を集め、抽選で選ばれた作品をデザインに、本物の花火を打ち上げた。観覧会場には、子供たちを招待する席も設けられた。

 その後のリーマン・ショックや東日本大震災という危機も乗り越え、多い年で40万人以上が夜空に花開く大輪を楽しんだ。24年には「花火大会を百年続けたい」と、実行委員会をNPO法人化した。

 炭田さんは「若手経営者が先輩の後ろ姿を見て、大会運営や社会人としての立ち居振る舞いを学んだ」と、若者の人格形成の場でもあったと振り返る。

 引き継がれる思い

 幾多のハードルを乗り越えてきた実行委員会だったが、コロナ禍は大会の運営を一変させた。

 ただ、花火が途絶えた“夏”を知る実行委員会のメンバーらは前を向き続ける。

 昨年は例年通りの開催こそかなわなかったが、会員制交流サイト(SNS)を活用し、家庭で花火を楽しむ動画や写真を投稿してもらった。事情があって家庭で花火をすることができない子供もいると教えられた沢村会長らは、養護学校や子ども食堂などを訪れ、一緒に手持ち花火をした。

 そこには、花火大会を復活させた当時の自分たちのように、子供たちの笑顔や思い出作りのために汗を流す地域の大人たちの姿があった。「自分たちは何のために活動しているのか、と改めて見つめ直す機会となった」(沢村会長)。

 最近、沢村会長が感激したことがある。初めてボランティアとして参加した若者の一人が「幼稚園の時に花火の絵を描いた」と話したことだった。復活から15年という歳月を重ね、花火を「見た」子供たちが今では、次の子供たちのために花火を「打ち上げる」立場に成長していた。

 「花火大会を続けることで、私たちの『想い』は親から子供に受け継がれている」。沢村会長はそう確信している。(鈴木正行)

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