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「これが僕の柔道です」高藤、泥臭く頂点 柔道男子60キロ級

 「泥臭くても金メダルを取る」。その宣言通り、延長戦の末、台湾の楊勇緯(よう・ゆうい=23)との死闘を制して王者の座を勝ち取った。今大会の日本選手第1号の金メダル。柔道男子60キロ級決勝で勝利した高藤直寿(なおひさ)は畳を下りると、涙が止まらなかった。「豪快に勝つことができなかったが、これが僕の柔道です」。型にはまらずに貫いた我流が快挙を成し遂げた。

 「進化が止まらない。もっといえば、変化を恐れない」。中高大学の1学年先輩で、専属の付き人としてサポートする伊丹直喜さん(28)はこう語る。

 2013年の世界選手権を制覇し、20歳で王者となったが、前回五輪は銅に終わった。「本当、すみませんでした」。試合後、伊丹さんの前で泣き崩れた。

 翌日から東京の畳を意識した。17、18年と世界選手権を連覇。だが、現状に甘んじはしなかった。世界を制してなお、新たな技の開発に貪欲だった。「高藤スペシャル」。相手の内股を自分の片股に乗せてはね上げ、投げる。相撲の櫓(やぐら)投げに着想を得た。

 ステップアップには必ず痛みが伴う。だから、多くの選手は及び腰になる。しかし、と伊丹さんは語る。

 「高藤は逃げない。それがないと強くなれないと分かっている」。柔道に生来のIQ(知能指数)のようなものがあるとすれば、「全階級、男女の中でもナンバーワンじゃないか」。

 努力のたまものだ。小学1年で柔道を始め、小4で中学生や社会人らの練習に加わった。「実直、という言葉が一番に思い浮かぶ」。当時指導した後援会長の倉井洋治さん(73)は話す。技をかけられては、かけ返していた。誰よりも回数を重ねていた。

 「集中、集中」。24日、両親は栃木県内の自宅でテレビに見入った。「直ちゃん、ありがとう!」。優勝が決まると、父の憲裕さんは両手を上げ、号泣した。小学生時代を指導した福田健三さん(71)は「試合から勝ちへのこだわりが見えた。円熟味が増した」と喜んだ。

 表彰台では、両手を突き上げた。金メダルを自ら首にかけると、満面の笑みがこぼれた。そして、待ち構える報道陣に、夢見心地で語った。

 「(金メダルは)銅メダルの前に、堂々と置いてやろうと思います」

(本江希望、田中充、原川真太郎)

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