教育・子育て

「子供を守る」 教育・福祉・心理の専門職でスクラムサポート (1/2ページ)

 虐待、貧困、不登校、発達障害…。子供たちの抱える困難は近年、さまざまな要因が複雑に絡み合うようになった。心理的アプローチや福祉的支援を要する場合、教員だけで対応するのは難しい。文部科学省は、教員と教員以外の専門職が連携し、学校を中心に一つの「チーム」として子供たちをサポートするよう求めている。

 「最近は家にお金がなく、友達の家で夜ご飯を食べさせてもらうこともあると話していました」

 7月上旬の午後、大阪市立中学校の会議室。校長、教頭、養護教諭、学年主任に加え、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)ら専門職が額を合わせ、問題を抱える生徒7人の支援策を考えていた。

 1人の生徒はひとり親家庭で、母親が定職に就かず家にもほとんどいない。「体重は?」。SCが尋ねると養護教諭が「ぎりぎり標準の範囲。これを証拠に虐待の通告はできない」と険しい表情を浮かべた。学年主任教諭は「給食をよく食べますからね…」。

 緊急の課題は夏休みになれば給食がなくなり、生徒が命の危険にさらされかねないことだ。食事の支援をしている地域のNPO法人を紹介することをSSWが提案し、当面の解決策とすることになった。

 家族から暴力を受けている可能性がありながら、教員がかかわることを言外に拒む生徒もいる。別の生徒は、自らを傷つけるリストカットを繰り返しており、専門職らは精神科の治療が必要だと考えているが、保護者の関心は低い。

 生徒を守り支えるために何ができるか、会議ではそれぞれの立場から意見を出し合う。一つのチームとして最善の策を考える。

 国の方針として

 大阪市は昨年度から、各学校に対しこうした会議を定期的に開き、支援策を講じるよう要請している。

 教員は学校での子供の様子や保護者の対応を説明。SCは子供の言動から心理状態を解説し、教員に対応の仕方をアドバイスする。SSWは貧困などの課題を抱える家庭について、行政やNPO法人などの福祉サービスを提案する。メンバーそれぞれの専門的な知見から、迅速かつ効果的なサポートを行うのが狙いだ。

 こうした連携は国全体の方針でもある。文部科学省は平成26年、複雑化する子供たちの課題に対応するため、専門職が参画する「チームとしての学校」をどう実現すればよいかを中教審に諮問。翌年の答申を受け、29年には学校教育法施行規則を改正した。学校でのSCとSSWの役割について、児童生徒の「心理、福祉に関する支援に従事する」と明記された。

 前向きな変化も

 冒頭の学校は支援を要する生徒や家庭が多く、月に1回、会議を開いている。すぐに問題が解決する例はほとんどなく、継続的に協議しながら改善を目指す。

 たとえば、母親が恋人に経済的に依存し、恋人が変わるたびに生活が困窮したり改善したりする生徒。母親の自立を促したいが、学校側には、保護者の行動を制限したり強制したりする権限はない。ある生徒は、体調を崩しても病院にかかれない。保護者が治療費を払えないためなのか、その確認すら容易ではない。

 事態がこれ以上悪化しないよう注意深く見守りながら、状況次第で虐待として児童相談所に通告する。だが、通告を生徒が望まない場合もある。「児童養護施設に入ることになれば生活環境が大きく変わる。『今のままでいい』と考える生徒もいる」と校長は話す。

 経済的な困窮も、行政の支援で直ちに解消されるわけではない。会議ではメンバーがこう指摘する場面もあった。「自立支援金を受給しても、おそらく母親の遊びに消えてしまう…」

 厳しい家庭環境の中で、前向きな変化を見せる生徒もいる。「登校回数が増えて勉強も頑張っている」「高校進学を話題にしたりと、自分に対して欲が出てきた」。こうした報告に、会議の空気が和らいだ。

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