環境とファイナンス

(中)GPIF、株式指数採用など取り組み

 年金基金、ESG投資を重要視

 世界の金融市場でのグリーンボンド(環境債)の発行拡大の背景として、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を考慮する投資概念の広がりが挙げられる。ESG投資は、ESG課題を投資プロセスに組み入れることを支援する責任投資原則(PRI)が2006年に策定されたことが契機となり、世界的に広がっていった。

 環境債をはじめとしたESG投資において、年金基金は重要な位置付けを占めている。そもそも世界銀行が08年に環境債を発行した背景には、環境問題をテーマに据えた債券型金融商品を望む北欧諸国の年金基金のニーズがあった。その後、多くの年金基金がESG投資に取り組んでいる。

 「世代またぐ投資家」

 日本の場合、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が15年9月にPRIに署名したこともあり、国内金融市場におけるESG投資が浸透していった。GPIFは、日本の公的年金の積立金の管理・運用を行う政府関係機関であり、年金基金として世界最大規模の資産(20年末で約178兆円)を運用している。年金保険料から集められた公的年金積立金は、厚生労働相の寄託によりGPIFが運用受託機関を通じて国内外の債券市場や株式市場で運用し、運用収益とともに年金給付の原資としている。

 GPIFは、資本市場全体に幅広く分散して運用している投資家として「ユニバーサル・オーナー」と位置付けられるほか、運用する年金積立金は、将来の現役世代の負担が大きくなりすぎないように使われることから「世代をまたぐ投資家」の特性も有している。

 そのため、長期にわたって安定した収益を獲得するために、投資先の個々の企業の価値が持続的に高まり、ひいては資本市場全体が持続的・安定的に成長することに加え、資本市場が抱える環境的・社会的問題に関する負の影響を減らすことが重要と考えている。そして、ESGの要素に配慮した投資に、長期的にリスク調整後のリターンを改善する効果があるとの期待の下、ESGの要素を運用に取り込んでいる。

 気候変動の影響分析

 GPIFでは、ESG投資において環境面に関する取り組みも積極的に行っている。主なものとして、(1)環境株式指数の採用(2)複数の国際機関などが発行する環境債などの投資機会のGPIFの運用受託機関への提供(3)ポートフォリオの気候変動リスク・機会分析の実施-が挙げられる。

 1点目の株式指数とは、取引所に上場される特定の銘柄群の全体的な動きを示す指標である。GPIFは18年9月、国内株および外国株を対象とする環境株式指数を選定し、指数に連動する投資を開始した。指数の主な特徴は、同業種内で売上高当たりの炭素排出量が少ない(炭素効率性が高い)企業と、温室効果ガス排出などに関する環境情報開示を積極的に行っている企業の投資ウェイト(比重)を高めている点である。GPIFはこれらの指数が、企業の炭素効率性の向上と環境情報開示を促進することにつながるとの期待を示している。

 2点目について、GPIFは17年10月、投資原則を改正し、株式のみならず、債券など全てのアセットクラスでESGの要素を考慮した投資を進めることとした。同年同月には世界銀行グループと共同で債券投資とESGに関する共同研究を開始し、18年4月には報告書を公表した。さらに19年4月からは、世界銀行グループをはじめとした複数の国際機関が発行する環境債などのESG関連債券への投資機会を、GPIFの運用受託機関に提供する取り組みを行っている。20年3月時点でGPIFの運用受託機関を通じた環境債への投資実績は、約4414億円に上っている。

 3点目について、GPIFは18年12月、気候関連の開示促進を目的とした気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、18年度の活動報告よりTCFDが公表した気候関連財務情報の開示に関する提言に沿って、気候変動に係る政策変更が保有ポートフォリオに与える影響の分析を公表した。19年度の活動報告においては分析範囲を拡大し、気候変動のリスクおよび機会の統合的な評価結果を開示している。

 今後、これらのGPIFによるESG投資関連の取り組みが、環境分野の課題解決に貢献すると同時に、GPIF自身の投資パフォーマンス向上にもつながっていくのか、日本の金融市場にとっても注目される。(野村資本市場研究所野村サステナビリティ研究センター副主任研究員 富永健司)=次回は6月7日掲載

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