海外情勢

「文在寅政権は経営リスク」仏ルノーがとうとう韓国からの撤退を示唆した背景 (1/2ページ)

 ■文政権の政策は限界にきている

 足許、ルノーサムスン自動車をはじめ一部の韓国企業で労働争議が深刻化している。特に、ルノーサムスン自動車のケースは深刻だ。労働側はあくまでも全面対決の姿勢を崩さず、経営側も厳しいスタンスで対立は激化している。世界的な半導体不足によって自動車の生産は減少しており、同社の業績はかなり悪化することが懸念される。

 韓国の労働組合は、目先の既得権益の強化をより重視しているようだ。その背景には、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が最低賃金の引き上げなど、重要な支持基盤である労働組合寄りの政策を進めたことがある。労使対立が先鋭化した結果、中長期的な韓国企業の事業運営体制を不安視する投資家も出始めた。それは、文政権の経済政策の限界と言い換えてよいかもしれない。

 一方、サムスン電子などIT先端企業は、世界的な競争力を発揮するわが国の素材メーカーなどとの関係を強化し、より安定したサプライチェーンの確立に取り組んでいる。それに呼応して、わが国の素材メーカーなどは韓国での生産体制の増強を図っている。韓国経済において、労働組合問題を抱える企業とそうでない企業の差異が次第に広がっているようだ。それは中長期的な韓国経済の実力に無視できない影響を与えるだろう。

 ■とうとう韓国からの撤退を示唆

 文政権下の韓国では、労働争議が激化し、一部企業の経営に無視できない影響が生じてきた。足許、その状況に拍車がかかりつつあるようだ。

 その一例として、ルノーサムスン自動車の労使紛争は深刻化している。2月には仏ルノーの経営陣が「韓国での生産性向上を実現できないのであれば代替案を模索する」と述べた。それは、労働争議が止まらないのであれば韓国からの撤退を真剣に考えるとの警告だ。それほど労働組合の要求は企業の事業運営の効率性を阻害している。

 それにもかかわらず、ルノーサムスンの労働組合は基本給の引き上げを経営陣に要求し続けている。5月に入り、労組は全面ストに踏み切った。それは、労働組合からの支持獲得を重視した文政権の経済政策の限界というべきだ。業績が回復している自動車メーカーの起亜でも労組は賃上げや定年退職年齢の引き上げなどを求めている。造船大手の現代重工業でも労使の協調が難しい。

 ■企業の存続を阻害し始めている

 足許の韓国経済の状況を考えると、労使対立の激化は何としても避けなければならない。特に、世界全体で半導体不足が深刻な中、自動車メーカーなどは組織全体が集中して必要な半導体を確保しなければならない。それが米中の自動車のペントアップディマンドの取り込みや、自動車の電動化への取り組みをはじめとする中長期的な事業運営を支える。

 逆に言えば、組織内の不協和音が増し、変化への対応が少しでも遅れると、企業の競争力は急速に低下する恐れがある。それくらい、世界経済全体の環境変化が加速し、激化している。そうした危機感があるからこそ、わが国では自動車、石油化学、機械など産業界全体が協力して、火災で一部稼働がストップした車載半導体大手のルネサスエレクトロニクス那珂工場(茨城県)の早期復旧に取り組んだ。

 ルノーサムスンなど一部の韓国企業における労使の対立は、わが国企業の事業運営体制や人々が共有する価値観とは大きく異なる。突き詰めていえば、韓国企業にとって労働組合の影響力拡大は、企業が長期の存続を目指す力を毀損する要因と化しつつある。

 ■経済面では日韓企業は協調

 その一方で、IT先端分野ではサムスン電子やSKハイニックスが事業体制の強化を目指している。重要なポイントは、サムスン電子などがわが国の高純度の半導体資材などをより多く必要とし始めたことだ。経済面において日韓の企業の利害は一致している。

 それは、韓国での生産能力の拡大に取り組む本邦企業が増えていることから確認できる。例えば、韓国にてダイキン工業はC&Gハイテック(韓国の半導体製造装置メーカー)と合弁会社を設立し、半導体製造に用いられるガスを生産する工場を建設する。また、韓国で東京応化工業はフォトレジストの生産能力を倍増する。サムスン電子などの韓国半導体産業にとって、高純度かつ微細な半導体部材の調達において、わが国企業との関係強化は欠かせない。

 ダイキン工業の合弁事業と東京応化工業の韓国事業には、サムスン物産が参画しているようだ。サムスングループの創業家は、サムスン物産などを経由してサムスン電子の株式を保有し、財閥全体への支配を続けている。

 つまり、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長をはじめ創業家にとって、わが国企業との取引の維持と強化は、企業の成長を通した一族の繁栄に無視できない影響を与える。程度の差はあれ、同じことは車載半導体を輸入に頼ってきた現代自動車の創業家などにも当てはまるだろう。

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