海外情勢

エルサレム衝突 「脱トランプ」のバイデン米政権、沈静化の道筋みえず

 エルサレム旧市街でのパレスチナ人とイスラエル治安部隊の大規模衝突を受け、バイデン米政権は10日、イスラエルと将来のパレスチナ国家による「2国家共存」を目指す考えを改めて強調し、イスラエル寄りだったトランプ前政権からの転換を印象付けた。一方でバイデン政権はイラン問題などを念頭にイスラエルとの関係維持に腐心しており、同国との立場の違いを際立たせかねないパレスチナ問題では、和平仲介などの具体的な関与策を打ち出せていない。

 米国務省のプライス報道官は10日の記者会見で、イスラエルとパレスチナの双方に緊張緩和を呼び掛けた上で、イスラエルには、衝突があった旧市街を含む東エルサレムの住民に「哀れみと思いやりを持って接するべきだ」と求め、強制立ち退きや入植活動に反対の考えを示した。入植を推進する右派ネタニヤフ政権にくぎを刺した格好だ。

 プライス氏は、東エルサレムの最終的な地位は「当事者(による協議)で解決されるべき問題」だとし、東エルサレムの大部分をイスラエルの首都と認定した前政権と一線を画した。

 ただ、政権発足から3カ月余りがたった現在も、バイデン政権が2国家共存に向けた協議の仲介に乗り出す兆しは見えていない。背景には、優先課題として取り組むイラン核合意の修復へ向け、同国と敵対するイスラエルから一定の理解を得る必要に迫られていることから、優先度の低いパレスチナ問題で同国との関係をぎくしゃくさせたくないとの思惑がある。

 また、イスラエルでは過去2年で4回の総選挙が行われる政治空転が続く中でも、対パレスチナ強硬派のネタニヤフ首相が底堅い支持で政権を維持してきた。これに対してパレスチナ側では自治政府に対する住民の不満が強く、アッバス議長ら指導部の求心力が低下。バイデン政権には、こうした政治情勢で和平協議を主導するのは難しいとの判断もあるとみられる。

 歴代米政権は、イスラム原理主義組織ハマスなどのロケット弾攻撃に対してイスラエルが空爆などで報復することは「正当な自衛の範囲内」だとしており、バイデン政権もこれを踏襲。東エルサレムでの衝突やハマスによる挑発的な攻撃が長期化した場合、事態沈静化のためにバイデン政権がとれる措置は極めて限定的だ。(ワシントン 大内清)

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