海外情勢

航空業界そろり再始動 ワクチン接種本格化、相次ぐ越境往来解禁

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいる国・地域で国境を越えた往来の再開に向けた動きが本格化してきた。夏休みシーズンを前に、感染拡大を防止する移動制限措置を緩和し、レジャー・ビジネス両面での旅行需要喚起を図る。航空・旅行業界は本格的な需要回復をにらみ準備を急いでいる。

 楽観的観測広がる

 オーストラリア-ニュージーランド、シンガポール-香港などの国・地域は、隔離なしの相互渡航を認める「トラベルバブル」の導入を開始。英国はレジャー目的の海外旅行を週明けにも解禁する方針で、海外渡航先として承認する新たな「グリーンリスト」の詳細情報を7日発表する。

 欧州連合(EU)は国境を越えた渡航の円滑化に向け、6月までにワクチン接種歴などを証明する「ワクチンパスポート」の導入を目指す。フォンデアライエン欧州委員長は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、EUがワクチン接種済みの米国人旅行者の渡航を近く許可する計画であると明らかにした。

 航空会社向け助言会社JLSコンサルティングのジョン・ストリックランド氏は「欧米市場を中心に、今夏に何らかの形で海外旅行の再開が可能になるという楽観的観測が広がっている。航空各社はデジタル陰性証明書の導入や検査実施に向け入念な準備を進めており、政府も旅行再開を積極的に推進している」と指摘する。

 夏季旅行回復に期待

 もっとも、直ちに事態が正常化するわけではない。インドでは1日当たりの新型コロナ感染者が40万人を超え、世界で最も感染状況が深刻化している。大半の国で新型コロナのワクチンの接種を受けた人が人口の1%未満にとどまり、現行のワクチンを無効化する恐れのある変異株も流行している。米政府は4月、渡航禁止の対象を世界の約80%に拡大すると発表した。

 一部の国々が入国許可を認めるワクチンの種類を限定していることも本格的な往来再開の壁となる。ブルームバーグが確認した草案によると、EUは欧州医薬品庁(EMA)が認可したワクチンの接種者に限り入域を認める方針だ。中国も国産ワクチン接種者を対象に入国を許可する方針を示しているが、同国製ワクチンは米欧を含む多くの国で承認されていない。

 厳格な入国審査のために空港で長蛇の列が発生していることも懸念の一つだ。英ヒースロー空港の報告によると、同空港での入国審査の待ち時間が最長6時間に達し、長時間の行列に激怒した旅行者をなだめるため警察の仲裁が必要になる場合もあるという。

 ただ、旅行業界は今夏の旅行需要が昨年の落ち込みから大幅に回復することに賭けている。ブルームバーグNEF(BNEF)のまとめによると、航空各社は7月までに国際線の輸送能力を約3分の1増加させる計画だ。例えば、米ユナイテッド航空はアテネ、ドゥブロヴニク、レイキャビクなど米国人観光客の受け入れ再開を予定している都市に新たに季節運航便を就航させる。米アメリカン航空は今夏に国内線の座席数を2019年の90%超、国際線は80%の水準で運航する計画だ。

 欧州の旅行・レジャー株指数は経済再開への期待から今年に入り22%以上上昇したものの、足元の航空機利用は平時の水準をなお大幅に下回る。航空業界の主要ロビー団体は新型コロナの感染再拡大や変異株の猛威を理由に今年の航空業界の損失予想を約25%引き上げている。

 国際航空運送協会(IATA)は「航空各社と協力し、ワクチン接種証明書の単純明快で安全なデジタルプロセスの運用を確保したい」と述べた。(ブルームバーグ Nikos Chrysoloras、Siddharth Philip)

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