国内

政府と専門家に溝、国民の信頼損なう迷走 宣言発令の土壇場方針転換

 政府は14日、新型コロナウイルスの感染が急拡大している北海道など3道県への緊急事態宣言発令を決めた。当初は宣言に準じた「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を適用する案を専門家に示したが「不十分だ」との意見が続出して方針転換した。宣言の位置づけをめぐる認識の温度差などが背景にあるが、重要な政策決定をめぐる迷走は国民の不信感を招きかねず、対策の行き詰まりを如実に表している。

 菅義偉首相は13日夜の関係閣僚会合で、北海道への宣言発令を見送る方針を決めていた。重点措置でも酒類の提供自粛要請など宣言並みの措置をとれることに加え、宣言の場合、広大な北海道全域に網をかけることになる。「飲食店が1軒だけの村にも(札幌市と)同じ対策を取るのか」(政権幹部)という問題を考慮した。

 ただ、14日朝の基本的対処方針分科会では、専門家から「重点措置では不十分だ」「北海道の医療機関の窮状は大変なものだ」などと異論が続出。閣議出席のため、いったん中座した西村康稔経済再生担当相が首相に状況を報告した結果、広島、岡山とあわせた3道県を急遽(きゅうきょ)、重点措置から宣言に「格上げ」する修正が決まった。

 「専門家がそういうならそれでいいじゃないか」

 首相は西村氏らとの協議でそう述べたという。分科会終了後、専門家は「画期的だ」「決断に敬意を表したい」と評価し、政府は「専門家の意見を尊重するのは当然だ」(田村憲久厚生労働相)と取り繕った。

 専門家が宣言にこだわったのは「重点措置では国民に強いメッセージが伝わらない」という危機感からだ。感染力の強い変異株が蔓延し、すでに宣言発令から3週間近く経過した東京都でも、いまだに対策の効果が出ていないことへの焦りも背景にある。

 一方で、政府内では方針変更になお不満が漏れる。北海道は宣言に格上げしたとはいえ、対策をとる地域は限定する方向だ。整合性を重視する政府高官は「誰も(専門家を)止められなかった。地域限定の宣言なら重点措置の意味がなくなる。他の県もそうしてくれという話になる」と話す。

 「宣言も3度目だから、もうメッセージ性はあまりない」。東京の状況を念頭に、別の関係閣僚は冷めた分析を語る。政府と専門家の意識がそろわない状況では、ますます国民にメッセージは届かなくなる。(千葉倫之)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus