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韓国伝説歌手、AIで“復活” ベンチャー企業の合成音声技術活用

 早世した韓国の伝説的フォーク歌手が人工知能(AI)の力で“復活”し、死後の流行曲を往年の声で披露した-。韓国企業が開発したAIによる合成音声技術が生み出したもので、性別や言語、生死を問わずどんな声にも応用可能という。コンテンツ産業の革新技術として注目されている。

 「会いたい 会いたい こんな自分がいやになるほど」。1996年に31歳で亡くなった男性歌手、キム・グァンソクさんの歌声が響き渡ると、聴衆が驚愕(きょうがく)の表情を浮かべた。韓国のテレビ番組で披露されたこの歌は2002年に別の男性歌手が発表し、キムさんは存命中に聞くことすらできなかったはずだからだ。

 20年3月設立のベンチャー企業「スーパートーン」(ソウル郊外・城南市)はSBSテレビと協力し、キムさんの生前の曲から歌声を抜き出して20曲分を自社開発のAIに学習させた。

 AIはキムさんの声の特徴や歌い方のくせを把握し、本人とそっくりの合成音声を生成。番組の視聴者は「天国から霊魂が舞い降りて歌ったようだ」と絶賛し、男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の所属事務所は40億ウォン(約3億9000万円)の投資を決めた。

 日本でも故・美空ひばりさんの歌声がNHKとヤマハの協力によりAI技術で再現されたことがあった。ただ19年の紅白歌合戦で披露されると「死者への冒涜(ぼうとく)だ」と批判が起きた。専門家の間では、AIの美空さんに「お久しぶりです。あなたのことをずっと見ていましたよ」と話させた演出が視聴者を戸惑わせてしまったとの見方がある。

 スーパートーンはこうした過去の事例を分析。番組ではキムさんの歌声の再現のみにとどめ、遺族とも同意なく商品化しないことを約束し、故人の人権に配慮した。

 この技術を用いれば、アニメの声優の死去後もキャラクターの声を変えずに済ませることも可能だといい、日本語にも対応できるよう開発を進める計画だ。スーパートーン代表理事で、ソウル大でAIを研究している李佼●教授(●=日へんに句)は「遺族らの同意が不可欠だが、コンテンツ産業の創造性を極大化できる革新的な技術だ」と語った。(ソウル 共同)

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