終活の経済学

身近な死後の手続き(2)葬儀の場所とやり方を決める

 葬儀を行う場所としては、葬儀専用式場、寺や教会、火葬場併設の施設、自宅などが考えられる。葬儀サイトなどを運営する「鎌倉新書」が2020年、2000人を対象に実施した「お葬式に関する全国調査」によると、約9割が斎場・葬儀会館で行っていることが分かった。2位の宗教施設(寺・教会・神社など)を圧倒的に引き離す結果となった。

 式場を決定した理由で多かったのは、「アクセスの良さ」。複数の葬祭業者によると、家族葬が増えているなかで、「駅から近い」よりも「自宅の近く」を重視する傾向が強くなっているという。

 最近では、寺で行う葬儀も目立ち始めている。費用は寺によってさまざまだが、葬儀と布施、戒名をセットにしたプランなどもある。

 全体の4割が家族葬

 調査では、家族葬が全体の4割を占めた。では、一般葬に対する「家族葬の定義」はどのくらい知られているだろうか。大きな違いは、参列者を少人数の「家族」に限定するか、しないかだろう。お葬式そのものは一般葬と変わらない。

 一般葬の場合、訃報を積極的に知らせ、駆けつけた多くの人たちに参列してもらう。家族が想定していない人も含まれる。お葬式そのものの流れは一般葬と変わらない。

 ここで気になるのは、家族葬における「家族」とは、具体的にどこまでを指すのかだ。名古屋市内の葬儀社に聞くと、「基本は配偶者と2親等までです」という答えが返ってきた。

 「親等」は血族の近さを示すもので、配偶者は「ゼロ親等」と呼ばれたりする。故人から見て、両親、子供は「1親等」、故人の父方の祖父母、兄弟姉妹が「2親等」となる。ここまでが狭い意味での家族葬の参列者だ。

 実際には、子供や孫、兄弟姉妹それぞれの配偶者も参列するケースが多いだろう。おじ、おば、おい、めい、姻族に当たる配偶者の両親や兄弟姉妹…。参列をお願いする範囲次第で、人数も「5人」「10人」「20人」と変わってくる。親戚づきあいが日常的な地方では、「50人くらいまでが家族葬」(葬祭関係者)というところもある。故人のごく親しい友人、知人や近所の人らを招くケースも、今の家族葬の流れになっている。

 「一日葬」も増加傾向

 通夜などをしない「一日葬」も増えつつある。コロナ禍で「密」を避けることも、こうした「葬儀の簡素化」を後押ししている。

 費用、時間を抑えられることが最大のメリットだが、お別れの時間は短くなる。葬儀前日から遺体の安置を受ける式場も多いが、式場の利用を1日に限るというプランなので、家族が宿泊して故人と一晩を過ごしたい場合、追加料金がかかるケースが目立つ。

 このため、仏教式では亡くなった直後に僧侶が駆けつけて行う「枕経」も、一日葬では割愛される。菩提(ぼだい)寺の僧侶に依頼すれば上げてもらえるが、多くは葬儀当日の約1時間以内で全てを済ますことになる。

 ■料金見積もり、不安解消 事前相談で心の余裕を保つ

 各地の葬儀社が力を入れているのが「事前相談」だ。プランや葬儀会館について知り、実際の葬儀の内容や価格などをイメージできる。もちろん、「生前に不謹慎では」「巧みに契約させられるのでは」との見方は根強い。

 一方、身内が亡くなってから葬儀社を探すことに対して、「動揺した気持ちでバタバタしたくない」「慌てて葬儀を決めて後悔したくない」と不安を抱く人も多い。大手葬儀社によると、「自分の葬儀は自分で決めたい」という人も含め、事前相談に訪れる人は年々、増加傾向にあるという。

 28%が生前に決定

 葬儀サイトなどを運営する「鎌倉新書」の調査によると、葬儀社を死後6時間までの間に決めた遺族が51%と全体の半数を占めた。一方、28.1%が生前に決め、このうち約3分の1は生前に故人が決めていたという。決定した葬祭業者は専門葬儀社(70.6%)、冠婚葬祭互助会(15.7%)、JA系(11%)などの順だった。

 コロナ禍の影響で、葬儀社の所有する斎場・葬儀会館でのイベントが減っている。個別に相談・見学に行くことになるが、葬儀中を避けるためにも事前予約をした方がスムーズだ。

 斎場などでは、スタッフが親族控室やホールなどを案内し、プランなどを説明する。施設を見ることで、実際の葬儀もイメージしやすくなるだろう。

 最近では「寺葬」に積極的な檀那寺(だんなでら)や寺院も増えており、事前相談を行っている。こちらはお坊さんに葬儀や供養の悩みを相談できるチャンスでもある。

 相談=契約にあらず

 最大の心配は、事前相談をしたら、葬儀も依頼しなければならないか、ということだろう。

 多くの葬儀社は「大丈夫。あくまで相談で、契約ではない。複数の葬儀社を比較することをお勧めする」(首都圏の大手葬儀社)と明言する。業者の立場でみると、不幸に伴う葬儀だけに、事前相談を受けた後の強力な囲い込みは難しく、「いざというときに有力な選択肢にしてもらえる関係をつくりたい」(同社)というのが本音のようだ。

 よくあるのは、電話で葬儀の概算を問い合わせると「会館に来なければ教えられない」と言われるケースだ。葬儀の価格は内容や客の希望で個々に異なるため、葬儀社としては細かい意向を聞きたいところだろう。不親切な印象が強ければ、候補のリストから外した方が無難だ。

 ただ、見積もりの価格をきちんと比較したいのであれば、会館で直接相談した方がいいだろう。

 事前相談では、格安の見積もりが示されることもある。このため、葬儀の際には追加料金で高額になるのでは、という不安も尽きない。相談では、どんなケースでどのくらいの追加が発生するかをしっかりと確認したい。実際に契約するときに追加料金の説明をきちんとするように約束しておくことも大切だ。(『終活読本ソナエ』2021年新春号から順次掲載)

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