田中秀臣の超経済学

政府は悪魔、批判する側は天使…予見されていた報道の“偏向” (3/3ページ)

田中秀臣
田中秀臣

 この安中氏の研究をベースにすると、現在、政府が進めている65歳以上のワクチン接種の進展が、東京オリンピック開催だけでなく、日本の新型コロナ感染抑制の重要なキーになることがわかる。全国の高齢者が約3600万人で、1回目の接種を終えた人数は約91万人(首相官邸HP)なので、まだ約2.5%でしかない。先週、平日の1回目の接種数は高齢者が7万回程度だった。これまでは医療従事者に重点がおかれていたが、これからは高齢者のワクチン接種により注力することが必要になる。政府は1日のワクチン接種100万人を目標(現時点では最高で約35万人/日)にしているが、これは掛け値なしに重要な目標だろう。「悪魔理論」の指摘する通りに、ワクチン接種報道でもマスコミは自治体の不手際などに注目するケースが多いが、高齢者のワクチン接種の誘導に力を貸すべきではないか。

 待機の費用、英国は自腹

 さらに水際対策が心配だ。インドでの変異株の猛威の前に、インド、バングラディシュ、ネパールからの入国を厳格化し、「原則」禁止している。現在の水際対策では、出国時でのPCR検査、入国時での抗原検査、そして指定された宿泊施設での3日間の隔離がほぼセットになっている。だが、この隔離の費用(宿泊費、食費)は政府から出ている。文化放送「おはよう寺ちゃん」で著述家の谷本真由美(めいろま)氏が話していて知ったのだが、イギリスではこれらの費用は自己負担だという。これを日本でも取り入れた方がいい。これらの費用は自己選択的な入国抑止に役立つだろう。

 また、3日間の隔離が終わった後には、原則11日間の自主待機がある。これは自宅や、手配した宿泊施設が待機場所となる。この移動には公共交通機関は使えないのがルールだ。だが、実際には自主待機期間中に公共交通機関を利用しないでいるのか、ひょっとしたら「待機」せずに観光やビジネスなどで出歩いているのではないかなど、当人たちの善意に依存した極めてザルな運用だという指摘もある。また、位置情報をスマホを通じて当局に確認させる仕組みだが、最近の報道では1日あたり最大300人ほどが待機場所での確認ができなかったという。まさに善意はあてにならない。ここでも台湾のような厳格な位置情報の提供と罰則が必要だろう。この話も1年以上言われているが、まったく改善しない。

 問題がいろいろあるのは事実だ。だが、日本の報道はあまりにも“偏向”しすぎており、しかも一部は上記の「リベラル」勢力のように、政治的な“偏向”とも連動している可能性がある。これからオリンピックや総選挙が近づけば、さらに“偏向”の度合いが増すかもしれない。安易な「娯楽」に傾斜しないように、マスコミの報道、ネットの動きから距離をおき、冷静になる必要があるだろう。

田中秀臣(たなか・ひでとみ)
田中秀臣(たなか・ひでとみ) 上武大ビジネス情報学部教授、経済学者
昭和36年生まれ。早稲田大大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は日本経済思想史、日本経済論。主な著書に『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)など。近著に『脱GHQ史観の経済学』(PHP新書)。

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