海外情勢

新興国リスク、アジアは例外 過去30年の教訓…防衛策で耐性向上

 新型コロナウイルス禍が2年目に突入し、世界の新興国でインフレ、資本逃避、公的債務の膨張などかつて見舞われた同じ懸念が広がっている。ただ、アジアの一角だけは例外のようだ。

 アジア地域の政策担当者はこうした新興国特有のリスクにあまり頓着していない。これは1990年代後半に一部地域で起こった経済のメルトダウン(溶解)、2008年の世界金融危機、13年の「テーパー・タントラム(市場のかんしゃく)」など、過去30年間に負ったトラウマから学んだ教訓と、結果として導入された防衛策によるところが大きい。

 野村ホールディングスのエコノミスト、ソナル・ヴァルマ氏(シンガポール在勤)は「アジア諸国は過去の危機から学び、レジリエンス(耐性)を高めてきた」と指摘する。

 外貨準備と金融強み

 現在、アジア地域の新興国は大規模な外貨準備高と強固な金融システムを築き、世界屈指の製造大国として確固とした地位を占めている。また、他の地域の新興国の株式が下落する一方、アジア新興国の株式は先進国とともに上昇している。

 新型コロナ感染が世界最悪のペースで拡大するインドでは外貨準備が2000年以降10倍以上に拡大しており、経済的打撃に対するバッファーとなっている。インド準備銀行(中央銀行)のダス総裁は5日、新たな支援策の導入に際し「外貨準備は国境を越えた経済波及効果に対処する自信につながる」と述べた。

 米国債利回りが上昇し、食品や原材料などの価格が高騰する中、ブラジルやロシア、トルコなどの新興国は今年に入り利上げを余儀なくされた。一方、アジア新興国の中銀総裁は物価上昇は小幅かつ一過性で終わるとの見解を示している。ブルームバーグによると、今年に入りアジアの新興国が利上げに踏み切った例はなく、年内に利上げが見込まれているのはパキスタンだけだ。

 国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)は今年発表した報告書で、「アジア各国は08年の世界的な金融危機に際し、反循環的な財政・金融政策で対応し、高いレジリエンスを発揮した」と評価。さらに現地通貨建て債券市場の急速な成長が奏功し、アジア地域では1990年代以降に大規模な債務危機が発生していないという。

 コロナ禍で比較的早く回復した同地域の輸出も新たなバッファーとしての役割を果たしている。特に世界的に逼迫(ひっぱく)している半導体の主要サプライヤーである韓国と台湾は優位な立場にある。

 ブルームバーグの「新興国市場脆弱(ぜいじゃく)性スコアカード」によると、アジア新興国は一般的に外的ショックに対する耐性が最も強い国に位置付けられている。

 投資家多数が別格視

 新興国市場の投資家の多くは既にアジアを別格視している。香港のフィディリティ・インターナショナルのファンドマネジャー、イアン・サムソン氏はアジアが「実質的に独立した区画」とみる。BNPパリバ・アセット・マネジメントのポール・サンドゥ氏はアジア諸国の高いパフォーマンスが「当面」続くと見通し、経済だけでなく、ガバナンスも含めて強みがあると指摘している。

 もっとも、アジア諸国も相応のリスクを抱えている。インドやタイ、フィリピンでは新型コロナの感染が再拡大する一方、ワクチンの接種は遅々として進んでいない。民間部門の債務の増大や、中銀の独立性に対する疑念などの課題も残る。

 それでもDBS銀行のチーフエコノミスト、タイマー・ベイグ氏はアジア地域の経済は他の地域よりおおむね余裕があると指摘する。

 「アジア以外の多くの新興国では債務の持続可能性に関する懸念が浮上したり、投資家心理が劇的に悪化したりしているが、現時点ではアジアの新興国はこうした問題に煩わされていない」とベイグ氏は語った。(ブルームバーグ Michelle Jamrisko)

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