国内

原発は衆院選控え玉虫色 エネルギー政策漂流も

 経済産業省が21日に素案を公表した中長期的なエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」は、最大の焦点だった原子力発電の活用について秋までに行われる衆院選への影響を考慮し、玉虫色の表記になった。「必要な規模を持続的に活用」と明記する一方、「可能な限り依存度を低減」との文言も盛り込んだ上、「新増設・リプレース(建て替え)」への言及は見送った。

 「与党の中でも別の会派から意見があったので…」

 20日の自民党本部。経産省幹部は、党総合エネルギー戦略調査会の幹部会合で「原発依存度低減」の文言を維持した理由をこう説明し、連立政権を組む公明党の意向を反映したことをにじませた。

 菅義偉首相が4月に2030(令和12)年度の温室効果ガス排出削減目標「13年度比46%減」を表明後、自民党では原発活用を唱える声が高まった。46%減の目標達成には温室効果ガスを排出しない原発の活用が不可欠なためだ。

 一方、公明党は「原発ゼロ」を目指している。5月21日、梶山弘志経産相らは首相との面会でリプレースの記載で合意を得られなかった。公明が都議選や衆院選を控えた時期の原発議論に難色を示したことが影響したとみられ、エネルギー政策に精通する自民党議員は「首相が公明の支持母体の意向を受けたのではないか」と語る。

 梶山氏が新増設やリプレースをめぐる答弁で「現時点では想定していない」と繰り返すのも官邸の指示だとされる。当初7月下旬予定だった閣議決定の時期も10月に先送りとなった。

 首相に近い小泉進次郎環境相が原発活用の機運をそいだ面もある。基本計画の素案公表前の6月18日に閣議決定した政府の経済財政運営の指針「骨太の方針」は、小泉氏の主張通り、原発について初めて「可能な限り依存度を低減」と明記した。基本計画は経産省の所管だが、小泉氏は政府の大方針である骨太方針に原発低減を書き込ませることで機先を制した形だ。

 政府は素案で原発を「必要な規模を持続的に活用」とし、3年後に改定する次期計画でリプレースを盛り込む余地を残した。ただ、国民が原発に向ける視線は厳しく、経産省幹部は「衆院選後も前向きな議論は難しい」と語る。国の根幹であるエネルギー政策の議論は漂流し、首相が提唱した脱炭素社会の実現という国際公約は絵空事になりかねない。(奥原慎平)

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