国内

土石流対策でも「山梨モデル」 月内点検終了の迅速対応

 静岡県熱海市で起きた大規模土石流によって、国や自治体は「盛り土」という災害リスクを改めて突き付けられた。国土交通省が約1カ月かけて全国の盛り土箇所を把握するというが、山梨県はすでに県内の造成地の盛り土など約110カ所を抽出し、7月中に点検を終える予定だ。全国に先駆けた迅速な対応が際立つ。新型コロナ対策で注目を集めたように、土石流対応も「山梨モデル」として評価される可能性が高い。その緊急点検はどう実施されるのか、同行取材した。

 7月中に点検完了

 火山灰による弱い地質と非常に険しい地形が多い山梨県としては、3日に発生した熱海の土石流災害はひとごとではない。

 6日には県議会の政策委員会が土砂災害危険箇所の点検などを長崎幸太郎知事に求める緊急申し入れを行った。同時に県の担当部署は、盛り土を伴う造成地のうち、下流域に土砂災害警戒区域があるなど、緊急的に点検すべき地点のピックアップ作業を進めた。

 それらを受け、長崎知事は8日、県内の点検すべき箇所が110あり、その点検を7月中に完了させる方針を公表。翌9日から、現場に県の職員が入り、緊急点検を始めた。

 土中にたまる水

 9日に報道陣に公開したのは、甲斐市亀沢の山間部にある太陽光発電施設周辺とその下流の渓流の点検。施設の建設や資材搬入、その後の点検用の道路が、盛り土で作られている。この日は、県土整備部砂防課、林政部森林整備課、中北建設事務所といった県職員の担当者ら24人が、点検にあたった。

 点検項目は盛り土の上部や壁面に割れ目がないかや、排水用のパイプが正常に機能しているかなど。盛り土崩壊の大きな要因は土中にたまる水で、その点を留意しての点検作業だ。

 点検は2人1組になって進めた。盛り土上部の道路は舗装されているとはいえ、土がむき出しになっている場所があり、壁面の脇は雑草が覆っていて人が立ち入るのが困難な場所もある。1人が鎌や鉈で雑草を刈り取り、進入路を確保。その後ろから、かなづちを持った担当者がコンクリートで覆った盛り土壁面をたたき、空洞がないか音の変化で調べる打音検査をしていく。同時に、割れ目がないかなども目視点検する。

 別の組では、壁面の角度が申請図面と一致しているか測定し、同時にコンクリートブロックの目地から漏水がないかを点検する。内部に水がたまっている場合は、壁面が膨らみ、角度が変化するためだ。雨が降っている中での点検だったが、担当者は「雨の方が目地や傷から漏水しているのが早く確認できるので好都合」と、気象状況の悪さもいとわない。

 また、小型無人機(ドローン)を使ってエリア全体を観測し、地中に大量の水を含んだ場合に起きる地形の変形や、倒木によって裸地ができていないかを、渓谷部分も含めチェックした。

 「リスクを再認識」

 今回の検査では、いずれの項目でも問題点はないことを確認した。砂防課の岩舘知哉課長は「熱海の災害で、県内にも同様のリスクがあることを再確認している。特に、盛り土については、工事終了後に県が検査する仕組みだ。われわれが検査・確認した地点で、災害を起こすわけにはいかない」と強調した。

 今回の素早い対応は、新型コロナ対策でエビデンス(科学的根拠)に基づいた感染防止と経済活動の維持の両立を図る「グリーン・ゾーン認証制度」を想起させる。感染症も自然災害も県民生活にとって大きなリスク。そのリスクをいかに早く認識し、根拠ある対策でマネジメントしていくかが重要であることを再認識させた。(平尾孝)

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