海外情勢

ドイツ洪水、気候変動と災害対策が総選挙の争点に

 ドイツを中心に先週、西欧を襲った洪水は、19日までに196人の死者が確認された。河川の氾濫を招いた集中豪雨は、気候変動が引き起こしたとの指摘が強まっている。9月に予定されるドイツ総選挙では、気候問題や災害対策が大きな争点として浮上しそうだ。

 死者の内訳はドイツが165人、ベルギーが31人。ドイツの警察は19日、170人と安否連絡が取れずにいると明かしており、犠牲者はさらに増える恐れがある。

 洪水は14、15両日に続いた集中豪雨が、狭い峡谷に流れ込んだのが原因。ライン川やマース側、その支流があふれ、水位が急上昇した。ドイツでは大雨が予測されていたのに、政府は十分に対応しなかったとして、批判が出ている。

 集中豪雨が起きたのは、大西洋岸からフランス上空に張り出した高気圧に押され、ドイツ上空に湿った低気圧が滞留し、雨雲が堆積したためとみられている。

 温暖化による気流の乱れが背景にあるとの指摘もあり、ゼーホーファー内相は「この惨事が気候変動に関係していることに疑いはない」と発言。メルケル首相も18日、被災地を視察中、「気候変動問題にもっと迅速に取り組まねばならない」と述べた。

 報道によると、被害が集中した独西部ラインラント・プファルツ、隣接するノルトライン・ウェストファーレンの2州では、2日間で通常の7月の降水量のほぼ2倍に相当する降雨が観測された。

 今回の災害は、約2カ月後の総選挙にも影響を及ぼし始めた。

 ノルトライン・ウェストファーレン州は、中道右派与党「キリスト教民主同盟」(CDU)の首相候補、ラシェット党首が州首相を務める。目下、メルケル首相の後継者の最有力候補だが、被災地で「失態」を犯した。長靴姿で視察中、仲間と軽口をたたいて笑っている様子がテレビで報じられた。不謹慎だという指摘を受け、ツイッターで「不適切だった。申し訳ない」と謝罪した。

 一方、緑の党のベアボック共同党首は19日にテレビで、「極端な気象現象は今後、増えるだろう」と述べた。首相に選出されたら再生エネルギーへの転換を急ぐと訴えた。

 総選挙を前に、CDUが率いる中道右派連合と緑の党は、支持率で首位を争っている。

 ドイツは、過去にも洪水の被害を経験した。1962年には北海岸の大嵐でハンブルクが浸水し、約300人が死亡。2002年には東部ドレスデン周辺の洪水で約20人が死亡した。このとき、社会民主党(SPD)のシュレーダー首相は被災地支援に駆け付け、低迷していた支持率を挽回し、1カ月後の総選挙で勝利した。

 今回の洪水の被害は、スイスやルクセンブルク、オランダにも広がった。(パリ 三井美奈)

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