海外情勢

バイデン政権揺るがす「テキサスの乱」 中絶、ワクチンで連邦政府と対立

 【ワシントン=大内清】米共和党が優勢な南部テキサス州が、民主党のバイデン政権と激しく対立している。新型コロナウイルス対策をめぐる連邦政府の方針に反する政策や、人工妊娠中絶の制限に関する連邦最高裁判例を骨抜きにしようとする州法を相次いで打ち出しているのだ。共和党側は、地盤である保守層が重んじる「自由」や信仰に基づく価値を前面に押し出すことで、バイデン政権からの圧迫に抵抗するとの対立構図を描き出している。

 テキサス州のアボット知事(共和党)は11日、私企業を含む州内のあらゆる機関が、従業員や顧客に新型コロナワクチンの接種を強要することを禁じる-との知事命令を出した。

 バイデン政権は9月、すべての連邦職員や契約業者のワクチン接種を義務化。従業員数100人以上の企業には、従業員にワクチン接種を義務付けるよう要請している。アボット氏はこれを州民の自由意思に対する「強制」ととらえ、「禁止」という別の強制手段を持ち出したわけだ。

 同命令は「ワクチン接種は望ましいが、テキサスでは自発的なものでなくてはならない」「バイデン政権は接種義務を課すことで私企業をいじめている」などと主張し、連邦政府が州権や企業活動を抑圧しているとの構図を強調した。同州でワクチン接種が完了した人の割合は今月17日現在、全米平均より約4・5ポイント低い52・5%にとどまる。

 州と連邦政府の対立は、南部に多いキリスト教福音派が重視する人工妊娠中絶の禁止をめぐる議論でも先鋭化している。

 テキサス州では9月、アボット知事の署名を経て、妊娠6週前後とされる胎児の心拍確認後の中絶を禁じる法律が発効した。これに対してバイデン政権は、同法の効力差し止めを求める訴訟を提起。1審と2審で相反する判断が下されたのを受けて、司法省は今月15日、連邦最高裁に上告する方針を明らかにした。

 同法は、レイプや近親相姦による妊娠も例外として認めないほか、無関係の第三者が中絶に協力した医療関係者や家族、友人らを提訴でき、勝訴すれば少なくとも1万ドル(約110万円)が受け取れるなどとする内容。バイデン政権など中絶擁護派は「告発を奨励する『懸賞金』制度だ」と非難している。

 米国では「ロー対ウェード」と呼ばれる1973年の最高裁判例で中絶が合憲化されたが、主に共和党が優勢な州では、立法や司法闘争を通じて同判例の無効化を目指す動きが続いてきた。最高裁(定数9人)の判事構成は現在、保守派6人、リベラル派3人と保守派優位に大きく傾いていることから、保守層には今回のテキサス州法が突破口になるとの期待も大きい。

 一方で同州では7月、州議会多数派の共和党が、投票に必要な有権者登録を厳格化するなどの州法改正案を推進したのに対し、民主党議員団が州外に“脱出”し、議会を開催できなくすることでそれを阻止しようとする非常事態も起きた(同案は8月に成立)。

 新型コロナ対策や中絶問題、投票権をめぐる議論はいずれも、バイデン政権の行方を占う来年秋の中間選挙でも重要争点に想定されるテーマ。その中でテキサス州は、共和、民主両党によるイデオロギー対立の最前線の様相を呈している。

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