海外情勢

“頼れる米国”を体現 故パウエル米元国務長官の功績と「汚点」

 コリン・パウエルが言うのだから、本当に違いない-。2003年のイラク戦争前後をこう振り返る米国人は少なくない。

 レーガン政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務め、ブッシュ(父)政権では統合参謀本部議長として湾岸戦争(1991年)を指揮してイラクの侵攻を受けたクウェートの解放に尽力した。米国がソ連を圧倒しつつあった冷戦末期から、米国が唯一の超大国として国際秩序形成を主導した90年代初めまでを政権中枢で過ごし、そのキャリアには「黒人初」の称号がいくつも輝く。パウエル氏は、知的で温和な語り口も相まって「強く、頼れる米国」のイメージを体現する人物だった。

 そのパウエル氏が、ブッシュ(子)政権がイラク戦争に向かう過程では国務長官として、当時のフセイン政権が「大量破壊兵器を保有している証拠がある」と断言した。米国人の多くが「開戦には大義がある」と信じた。世論調査会社ギャラップによると、イラク侵攻への支持は開戦直後に7割を超した。

 しかし、大量破壊兵器は見つからなかった。イラクでの泥沼は米国の国力と威信の低下につながった。パウエル氏は後に「誤った情報に基づくものだった」「人生の汚点」と認めている。それでも同氏がしばしば大統領候補として名前が取り沙汰されるだけの人気を保持できたのは、ベトナム戦争に2度従軍した「英雄」であることに加え、こうした率直な態度があったからだ。

 一方、パウエル氏については、黒人からよりも白人からの好感度が高いとの調査結果もある。首都ワシントンでのきらびやかな経歴から、白人エスタブリッシュメント(支配層)に同化しているとみなされていたからだとの分析も聞く。多くの「黒人初」を達成したパウエル氏は同時に、人種問題の複雑さをも示す存在だったといえよう。

 近年は、侮蔑的な表現で政敵をおとしめるトランプ前大統領の手法を手厳しく批判し、「米国第一」主義が多くの同盟国との関係悪化を招いたことに警鐘を鳴らした。イラク戦争での自らの失敗を認めつつも、国際秩序維持のためには同盟関係や国際合意を尊重しなくてはならないと訴える姿勢には、「ステーツマン」としての矜持(きょうじ)があった。40年来の友人というアーミテージ元国務副長官は18日、「彼の死は国家の損失だ」と悼んだ。(ワシントン 大内清)

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