働き方

コロナ禍で政府が後押し「在籍出向」 新環境には配慮と納得が不可欠

 新型コロナウイルス感染拡大で雇用情勢に好転の兆しが見えない中、政府は勤め先と雇用契約を維持したまま従業員が他社で働く「在籍出向」の利用を後押しする。経営難で人件費を抑えたい企業と、好況で人手不足の企業が連携する取り組みだが、異なる業種や条件での就労が労働者にとって不利にならないよう、環境整備も課題だ。

 「学びあり充実」

 「いろいろな学びがあり充実した日々。この経験は出向元でも生かせるはず」。ふるさと納税仲介サイトを運営する「トラストバンク」(東京)に在籍出向中の立崎衣織さん(29)。店舗の空きスペースで観光客らの荷物預かりサービスを展開する「ecbo」(東京)がコロナで苦境に立ち、昨年6月からトラストバンクで働いている。会長秘書などを経て、現在は出向元と同じ広報に所属。週5日の勤務条件や給与水準も同じだ。

 新たな環境に身を投じることはストレスにもなり得る。立崎さんは「私はうまく溶け込めたが、出向先が合わない人も出てくるはず。事前に仕事内容など条件を会社と話し合うことが大切」と強調する。

 厚生労働省は賃金を含む就労条件について、労働者の利益に配慮するよう求めている。ただ民間同士の契約でもあり、仕事内容が劇的に変化したり、給与が減ったりする可能性が残る。

 政府は、休業手当の一部を補填(ほてん)する雇用調整助成金(雇調金)をコロナ下での雇用施策の柱としてきたが、支給決定額が3兆2000億円を超え、財布となる雇用保険財政は逼迫(ひっぱく)した。このため、日額上限計1万2000円で賃金を出向元や出向先に補填する制度を新設して、拡大を図る。

 特例を設けた雇調金よりも上限額は低いため、支出の抑制や、休業長期化からの脱却を狙う。コロナ収束後に再び人手不足になるとの観測もあり、将来を見据えて従業員をつなぎ留めておきたいという企業のニーズに応えることもできる。

 今後は都道府県ごとに労働組合や企業団体などで構成する地域協議会を設置し、導入に意欲のある企業を後押しする。

 過酷勤務で不利益も

 第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストは「企業の業績が分かれたコロナ禍ならではの取り組み。経験した企業が少ない中、助成金のみならず手続きや契約が円滑に進むような支援も重要」と指摘する。

 労働問題に詳しい梅田和尊弁護士は「コロナ禍で産業構造が変化し、取り組みの必要性は理解できる」とする。その上で「出向先の環境に問題なければいいが、過酷な勤務が課される『ブラック企業』の場合は労働者にとって不利益となる。賃金を含めた待遇面がきちんと配慮され、労働者が納得した上での出向とするべきだ」と強調した。

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