働き方

“70歳現役”改正高年齢者雇用安定法が施行 低い認知度、企業対応道半ば

 4月施行の改正高年齢者雇用安定法は、安心して長く働ける社会を実現できるかどうかが課題だ。70歳までの就業機会確保を求められた企業側は対応を迫られている。最多の形態と見込まれる継続雇用制度などでのトラブルの懸念も残る。

 家電量販店ノジマは、改正法を踏まえ、80歳まで1年契約で再雇用する規定を就業規則に盛り込んだ。「70歳までは続けたい」。ITシステム部で働く丸本明寿さん(65)は再雇用制度を活用する。社内のシステム運用などに24年間携わり、今もシステム改修の提案といった業務を担う。若手と同様に週5日のシフトに入り、給与などの待遇は64歳までと同じだ。

 改正法は、これまで義務だった65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業機会の確保を努力義務として促した。ノジマでは業務内容や勤務時間を本人と相談して決め、働き方が変わらなければ基本給や賞与は64歳までと変わらない。

 丸本さんは「65歳以降も会社や社会に貢献できるのが良い」と制度を歓迎。退職後はアルバイトをするかどうか迷ったが、今は経験を若い人に伝えようと意気込む。

 職場での愛称は「お父さん」。経営側は上司に言いづらい若手の相談に乗る役割も期待。年金額は受給開始を遅らせたことで増える見通しで、丸本さんは「急に体力が落ちたときにも安心」と捉える。

 就業確保が努力義務にとどまることもあり、企業の取り組みは道半ばだ。日本商工会議所産業政策第2部の杉崎友則担当部長は法の認知度の低さを指摘し「新型コロナウイルスの影響下での事業維持に追われ、対応に手が回らない中小企業は多いだろう」と話す。

 体力のある高齢者は雇用しやすい半面、短時間勤務など配慮を伴う働き方を希望する人に適した仕事を用意する余力のない企業側からは「全員の就業確保は難しい」との声も漏れる。

 関係者から問題点も指摘されている。既に多くの企業で導入される継続雇用制度では、給与などが引き下げられる例が多く、トラブルが相次ぐ。改正法で加えられた業務委託契約などの形では、企業との雇用関係はなくなる。厚生労働省は「労働関係法の保護が及ばない働き方だ」と説明する。

 就業をめぐり、企業とやりとりする高齢者は増える見通しだ。日本労働弁護団常任幹事の笠置裕亮弁護士は「仕事や責任があまり変わらないのに給与が大きく減っていないか契約をよく確認する必要がある。例えば、業務委託契約とされていても実態が労働だと判断されれば、労働関係の法律の保護が受けられる」と指摘。「疑問点は労働組合や専門家に相談してほしい」と助言している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus