働き方

最低賃金めぐる攻防激化 引き上げ求める政府に日商など抵抗

 全ての労働者に適用され、下回った場合は使用者に罰金が科される最低賃金(最賃)をめぐる攻防が今年は例年より早く始まっている。例年は目安が決まる7月直前に議論が集中するが、政府や労働界が既に引き上げを主張。これに対し、日本商工会議所などの中小企業加盟団体が新型コロナウイルス禍では雇用の維持を優先し最賃は据え置くべきだと反論し、対立が先鋭化している。

 「最低賃金をより早期に全国平均(時給)1000円とすることを目指す」

 菅義偉首相の3月22日の経済財政諮問会議での発言が、最賃をめぐる議論のきっかけとなった。首相には賃上げで消費を喚起し経済を回復させたい思いが強いとされる。今月14日の諮問会議では民間議員が年率3%程度の最賃引き上げを求める提言を提出。6月にまとめる経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に盛り込まれる方向だ。

 この動きを労働組合の中央組織である連合は歓迎する。神津里季生(りきお)会長は「仮に時給1000円で年間2000時間働いても、年収は200万円にしかならない。日本の最賃は先進国の中で置いてけぼりになっている」として、政府と足並みをそろえ、引き上げを求める。

 これに対し、サービス業や飲食業などでアルバイト、パートを多く雇用する中小企業側は、引き上げに強い警戒感があり、据え置きを求める。日商など中小企業3団体は共同会見を開催するなど、異例の対応で最賃引き上げの見送りを要望している。

 日商の三村明夫会頭は「最賃は下げられない中で、業況が悪化すれば雇用調整せざるを得ない」と語る。同時に「この5~6年、消費性向は下がり続けている。賃金が上がれば消費が増えるという模式は成立していない」と説明。賃上げが景気底上げにつながりづらい実情を示し、特にコロナ禍では企業の存続や、雇用を優先させるべきだと訴える。

 最賃は労使の代表や有識者で構成する中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が7月中に引き上げ額の目安を決める。これを基に各地の審議会が都道府県ごとに金額を決定する。

 政府の強い意向によって平成28年から4年連続で年率3%以上の上昇となったが、昨年はコロナの影響で目安を事実上、据え置いた。このことも、「賃上げの流れを復活させたい」考えの政府と、「昨年に比べて景気はよくなっていない中では、昨年同様に据え置くべき」と主張する日商との議論の対立軸になっている。(平尾孝)

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