働き方ラボ

就活で「ガクチカ」は必要か? 1度や2度の“武勇伝”よりアピールすべきこと (2/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 もちろん、これらの体験を否定するわけではない。どのように成果を出したのか、困難な状況をどう乗り越えたのか、どのように仲間を巻き込んだのかなど、問われるのは本人の取り組み方そのものである。何か成功体験がある人は、目標達成意欲や、視点が違うのではないかという見方もあるだろう。

 ただ、そのガクチカのインパクトだけに注目してしまっていては、面接官もミスジャッジをしてしまう。4年間で1度や2度の再現性の低い体験よりも、日常的に何にこだわっているのか、物事にどう取り組んでいるのかなどに注目するべきだ。

 このガクチカ話が面倒くさいのは、中にはこれを過度に評価してしまう面接官がいるということだ。面接官は別に人事部の社員だけで構成されるわけではない。現場の管理職や、経営陣も参加する。さらに人事部の中でも採用担当者は、専門知識や経験がなくても担当しやすい上、よく入れ替わる。だからノウハウが伝承されていないことがあるのだ。ゆえに、「ガクチカ過大評価」で有名企業の内定をとってしまう学生が出てしまう。それが就活武勇伝として伝えられ、学生を誤解させてしまうのだ。

 「ガクチカがない」という学生に対し、私は「冷静に大学生活を振り返ってみよう。できれば自分ひとりではなく、誰かを巻き込んで」とアドバイスしている。大学での勉強から、趣味やアルバイトまで、「何」をやったのかだけでなく「どう」やったのか、「誰」とやったのかを振り返ってみると、「地味だけど、成果を出すために自身がこだわっていること」がわかる。

 実は、この10年くらい注目されているのが学業に関する質問だ。成績の証明書を提出してもらい、それをもとに面接するという手法である。なぜその科目を履修したのか、なぜその成績なのか、成果を出すためにどのように取り組んだのか、などである。これにより、本人の価値観や取り組み姿勢などが明らかになる。残念ながら、心から大学の講義を尊重しているわけではないのだが。

 自身が、コロナにどう立ち向かったのかというのもアピールポイントにはなり得る。大変な環境下でどのように学生生活を充実させようとしたのか。何もしなかったわけではないことを確認しておきたい。

 転職活動でもみられる“勘違い”

 このガクチカ神話と同じようなものが、中途採用でも起こっていないか。何かすごい武勇伝がないと転職できないのではないか、と。特にここ数年の若手社員などは、入社すると当初想定していた職場とは異なる一方、何も経験を積んでいないので、転職でウリになる要素がないと悩んでしまう。これも大きな勘違いだ。

 圧倒的な成果が出たような武勇伝は必ずしも必要ない。これまで、何にどのように取り組んだのかを丁寧に書き出して振り返りたい。中途採用の場合、何をしてきた人なのか、何ができる人なのかは伝えるべきポイントだ。

 なお、中途の応募手段も多様だが、人材紹介会社を経由した場合、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策も応じてくれるので便利だ。自分では思いつかないアピールポイントが見つかることもある。

 「すごい武勇伝礼賛」を手放そう。地味だけれども、誇れること。これを振り返ってみよう。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部准教授
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら。その他、YouTubeチャンネル「常見陽平」も随時更新中。

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