働き方

最低賃金をめぐる協議再び 日商・三村明夫会頭と連合・神津里季生会長に聞く

 最低賃金をめぐる協議が中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)で始まった。昨年同様、新型コロナウイルス感染拡大が経済に影響を及ぼす中、水準維持を訴える使用者側と、大幅引き上げを求める労働者側が激論。今年は菅政権が増額に意欲を示す。日本商工会議所の三村明夫会頭(80)と、連合の神津里季生会長(65)から話を聞いた。

 日商・三村明夫会頭

 雇用維持・横ばい目指す

 --新型コロナウイルスの中小企業への影響は

 「飲食や宿泊、交通は大幅赤字で、最低賃金(最賃)水準の雇用も多い。経営者は雇用調整助成金をもらい、労働者を休業とし、解雇せずに必死だ。多くの経営者にとって『下町ロケット』のように従業員確保と企業繁栄は同じ。最賃は強制力をもって適用される制度で、違反すれば罰則がある。引き上げは、廃業を考えながらも何とか継続している、心が折れそうな経営者を追い込みかねない」

 --政権は引き上げに意欲を示す

 「中長期的には、付加価値を増やして賃金を上げ、最賃も引き上げていくべきだが、今年はその状況にない。優先すべきは雇用維持と事業継続だ。地方で雇用がなくなれば、人はさらに大都市に集まる。ただ中小企業も新しい商品づくりや事業に必死に努力すべきだ」

 --使用者側の主張は

 「横ばい、据え置きを目指す。政府の経済財政諮問会議の結論を追認するような状況が続くなら、公労使による審議会は不要だ。データを客観的に分析、検討した内容を踏まえ、根拠を明確にして結論を導いてほしい」

【プロフィル】三村明夫 みむら・あきお 1940年生まれ。新日本製鉄(現日本製鉄)会長などを経て、2013年から現職。

 連合・神津里季生会長

 コロナ影響とは区別を

 --昨年度は最低賃金(最賃)額を事実上据え置き、現在の全国加重平均額は時給902円だ

 「近年続いた引き上げを止めた影響は大きい。雇用優先の名の下に、安易な現状維持を求めた政権姿勢に問題があった。連合の方針は『誰もが時給1000円』の早期実現。最高、最低額の差が221円の地域間格差も是正すべきだ。日本は国際的に低額で満足に生活できる水準でない」

 --昨年に引き続き新型コロナウイルス禍だ

 「特に飲食、宿泊業が厳しい。コロナの一時的影響は最賃議論と区別し、休業補償などは政府の責任で進めてほしい。全国平均1000円の早期実現と言うならば、中小企業の生産性支援など政府による経営環境の整備は必須。コロナでも諸外国は最賃を上げている」

 --引き上げれば雇用情勢悪化が懸念される

 「個別企業のミクロの理屈を社会全体に適用するのは間違いだ。賃上げで消費喚起し、内需拡大が欠かせない。雇用か賃上げかという二者択一は卒業すべきだ。(単年交渉でなく)政労使で目標となる額と達成年を設け、段階的に引き上げる方法もある」

【プロフィル】神津里季生 こうづ・りきお 1956年生まれ。新日本製鉄(現日本製鉄)の労働組合連合会会長などを経て2015年から現職。

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