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アパと星野リゾートは、コロナ下でがっちり生き残った 実は似て非なる「ホテル業」 (1/2ページ)

苅野進
苅野進

 新型コロナによって大きな打撃を受けている旅行業界の中で、きっちり生き残ったという評価のあるアパホテルと星野リゾート。アパホテルは元谷芙美子社長が、星野リゾートは星野佳路社長が積極的にメディアに登場しています。日本のホテル業界人と言えば、一般的にはこのお二人がダントツの知名度なのではないでしょうか。

 この2つの企業は、同じ「ホテル業」と見られがちですがその中身は大きく異なっています。「ホテル業」の現在も確認しながら、それぞれの「業態」を見ていきたいと思います。

ノウハウと資金力を生かした「所有直営」

 「ホテル業」と聞いて、みなさんが一番想像しやすいのは、「所有直営方式」と呼ばれるものです。その名の通り、ホテルを所有している人(法人)が運営をするというものです。個人経営のペンションなどを想像していただくとわかりやすいと思います。例えば帝国ホテルはこの形式ですね。

 アパホテルは「直営ホテル」として300軒ほどを運営しています。アパホテルは、潤沢な自前の資金と金融機関のバックアップによって即断即決で用地や既存ホテルを買い上げることで有名です。すでに300軒のホテルを抱えていることもあり、「どのような立地なら勝ちパターンに持ち込めるか」を熟知しているだけに判断が早いのでしょう。

 他の企業であれば、調査をし、資金繰りを調整するといった手順を踏まなければならないところを迅速に動くことで貴重な駅前立地を確保していると言えます。そして、自前の社員・システムにより運営まで効率的にこなしているのです。

所有リスク負わずに「運営」に特化

 アパホテルのような「所有直営方式」が当たり前のように思えるかもしれませんが、ホテル業界においてこのシステムは実は少数派になってきています。ホテル自体の所有はせずに、運営を受託する企業が多いのです。たとえば新宿のホテル、ヒルトン東京の場合、所有者は「東京都市開発」で、運営が「ヒルトン」です。

 そして星野リゾートは、リゾート「運営」企業なのです。有名な北海道の「星野リゾートトマム」は中国の投資会社が所有していて、星野リゾートが運営を受託しています。同社は、2000年初頭からゴールドマンサックス証券と組んで、苦戦していた老舗旅館の「運営権」を次々と獲得していきました。

 最近は、自ら設立した投資法人によってホテルを買収して、運営権を取得。のちにホテル自体は売却するといった手法も取りつつ、「所有」のリスクを取らず、「運営」企業としてのノウハウを高め、横展開するという事業を進めています。この手法を取れば、「ホテルの所有」という莫大な投資をする余裕がなくてもホテル業に進出できるという利点があります。

 軽井沢の老舗旅館の生まれだった星野社長は、「所有」のリスクの大きさや「所有」のためにかかる費用・時間に対するリターンよりも、「運営」特化による自らのポテンシャルに自信があったのでしょう。

 アパホテルは「自社所有」による利益率の高さを強さの源泉とし業界トップの売り上げを狙っています。一方、星野リゾートは「運営特化」という「選択と集中」の典型スタイルによって価値を出しています。この2社の対比は、アパレルで言えば、すべてを抱えるSPA(製造小売業)の「ユニクロ」と、デザインに特化している藤原ヒロシ率いるfragment designのような構図でしょうか。

分業と自前、強みに合ったスタイルを選ぶ

 Appleの台頭で流行した「分業」も、ユニクロ、ニトリの成功でもてはやされた「自前主義」も、勝てるビジネスモデルを考えた上で採られた戦略という点では同じです。いずれの企業も、徹底的に強みを理解し、生かしたことでコロナの状況の中でむしろ伸びているのです。いずれのスタイルでもトップ企業は生まれているので、どちらが強いというわけではなく、自らの強みにあったスタイルを選ぶことの方が重要なのでしょう。

 ただ、かつての日本の製造業が「完全自前主義」でコスト増となってしまったように、やはり自前主義はスケールメリットの効く本当のトップ企業でないと難しいのかもしれません。そして、永遠に拡大を続けることも難しいことは、様々な事例が物語っています。

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