働き方

フェンシング、五輪金に導いた「世界一」の手袋職人と選手の絆 (1/2ページ)

 東京五輪で金メダルを獲得したフェンシング男子エペ団体。快挙の裏には4選手中3選手が着用し、絶大な信頼を寄せるベテラン手袋職人夫婦との固い絆があった。「手袋のまち」とも呼ばれる香川県東かがわ市で工房を営む夫婦は「五輪チャンピオンは私たちにとっても最高のプレゼント」と口をそろえ、高松市出身の宇山賢(さとる)選手らが金メダルを携えて報告に来る日を心待ちにしている。

 サプライズの贈り物

 東かがわ市で工房「スケルマ」(イタリア語でフェンシングの意)を営む細川勝弘さん(75)、かずゑさん(72)。自宅兼工房の一角にはフェンシンググローブが飾られていた。宇山選手が五輪本番で着用し、「世界一のグローブ! 2021・7・30」などの文字とともに本人のサインが入っている。

 五輪閉幕の数日後に郵送で届いた。「修理ではないし、何だろう」と開けるとサプライズの贈り物だった。夫婦のグローブを中学の頃から使い続けている宇山選手からの特別な計らいに「本人にとっても宝物のはずなのに」と、思わず感極まった。

 フェンシング日本代表チームとは家族同然の仲といってもいい。エペ団体では宇山選手、見延和靖選手、山田優(まさる)選手がスケルマのグローブを使用。加納虹輝選手も「少し前から使っている海外製のフィーリングがいいので今回はこれでいきます」とわざわざ言ってくれたという。

 チケットが当たり、当初は観戦に行く予定だったが無観客に。五輪当日は工房を閉め、わが子を見守るようにテレビ観戦した。五輪への提供は4大会目だが自国開催の五輪で画面にグローブが映っているのを見て感慨深かったという。

 宇山選手は1回戦の米国戦の途中で見延選手と交代で出場。勝弘さんの目には動きがいいと映り「いけそうな流れ」とは感じ「五輪前は銅ぐらいはいけるかと思っていたが、まさか金とは」という最高の結果に。

 宇山選手がリザーブとなったとき、勝弘さんは「海外選手がやり慣れていない変則スタイルなので必ず出番がある」と確信。五輪前に「悔しさを試合にぶつけろ」と声をかけると「分かりました。思い切っていきます」ときっぱり答えた。「途中出場は難しいのだが悔しさをばねに最高のプレーだった」とたたえた。

 決勝戦の勝利まであと2点となる43点を取ってからは万感の涙でよく覚えていない。「日本代表とは十数年。みんな子供の頃から金メダルを目標にして頑張ってきた。これまでの代表選手らの姿が浮かび思いが込み上げた」。かずゑさんも「小さな工房で自分たちが作ったグローブでの金は最高のご褒美」と喜ぶ。

 試合の2日後に宇山、見延両選手からそれぞれ電話があり、祝福すると「落ち着いたら報告に行きたい」と返ってきた。「顔を見てゆっくりと話を聞きたい」と、楽しみに待っている。

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